JOURNAL

豊田市駅と豊田スタジアムのちょうど中間、桜城址公園や教会など生活が息づく街並みの中にknotはあります。角の丸い大きなガラス窓が印象的な外観はテイクアウトしたお客さんたちにとって絶好の撮影スポット。取材時も通りかかった若者たちが思わず「かわいい！」と声をあげていました。

料理好きからパンづくりの道へ

水谷さんは料理好きが高じてパンの世界へ。 “2度同じものができない” パンの奥深さに魅せられ、本人曰く「毎日毎日狂ったように生地を手ごねしていた」とのこと。パン教室や大手ベーカリーでパン作りの技術を磨き、自身のパン工房「Riso」を12年前に名古屋で創業。スーパーでの店頭販売、マルシェへの出店を経て、6年前に豊田市西町で小野さんがリノベーションし運営している店舗に移転し、今に至ります。

もともと料理好きだった水谷さんはRisoのパンを料理として味わえる場所を作りたいとの想いから、小野さんとともに新たに会社を起業し、北欧のオープンサンド「スモーブロー」を味わえるカフェ「think」をオープンします。

スモーブローはバターを塗ったライ麦パンに、様々な食材をパンが見えなくなるくらい盛りつけるデンマークの伝統的な料理。それを水谷さんがアレンジし、食事メニューからスイーツまで、色鮮やかなオリジナルのスモーブローをRisoのパンと組み合わせて提供しています。

thinkはもともと行政書士事務所だった建物をリノベーションした店舗。中に入ると自然光が差し込み、抜け感のある開放的な空間が広がります。「正面と背面の壁を撤去してガラスサッシに入れ替え、テーブルや椅子・ベンチの背もたれ、の高さを統一することで、お店の裏にあるポケットパークを眺めることができる、広がりのある空間に仕上げています」と小野さん。
Riso、think、knotは小野さんのシンプルでモダンなリノベーションの設計と、水谷さんのアイデアあふれるメニューの掛け合わせで唯一無二の魅力が作り出されています。

thinkの調理スペースに限界を感じていたところ、近くの美容室が空き店舗となっていることを知った小野さんと水谷さん。「管理していた不動産屋さんがたまたま知り合いで、いろいろ考えずすぐに契約しました」という物件が、今のドーナツ店knotです。

「もともとはRisoとthinkのセントラルキッチンにしようと考えていました。」というおふたり。でもせっかく厨房機器があってスタッフがいるのだから、水谷さんが前から作りたかったドーナツとホットドックのテイクアウト専門店をやろうという話になりknotが誕生しました。

「外壁はモルタルで塗り直しましたが、円窓はそのままにして美容室の面影を残しました。またもともと花壇だったところをベンチにして、テイクアウトした商品をすぐに食べたり、お客さん同士がコミュニケーションをとったり、撮影スポットとなる場をつくりました。」と小野さん。

knot=つなぐ、結びつける

knotのドーナツは江別製粉の粉を使用。小野さんと水谷さんが実際に北海道の江別製粉まで足を運び、小麦の収穫まで体験したと言います。ホットドックに使われている沖縄市「TESIO」の自家製ソーセージやドリンクメニューとして提供している「haru.」のスペシャルティコーヒー、「奈良醸造」のクラフトビールも実際に二人で現地まで足を運び、作り手の想いに共感して仕入れたもの。

これからの展望をお聞きすると「次は揚げたてドーナツのキッチンカーでマルシェに出店してみたい」と水谷さん。knot=「つなぐ、結びつける」という意味の通り、全国の生産者や作り手と街をつなぎながら、豊田市に新たな魅力を生み出し続けています。

取材・文／BRENC