JOURNAL

柄木田製粉(長野県長野市)

総務省の家計調査によれば長野市は小麦粉の消費量が全国一。
昔から主食や「おこびれ」と呼ばれる農作業の合間の軽食として、おやき、うすやき、うどん、おぶっこなどが食べられてきました。こうした郷土食に、パンやパスタ、ラーメンなど新たな食文化が加わって、今も粉食文化がよく根づいています。

そんな長野県で唯一、小麦の製粉を生業とするのが柄木田製粉です。
長野といえば小麦粉、小麦粉といえば柄木田製粉なのです。

柄木田製粉(長野県長野市)

自家製パンならユニバース

BRENCは、パンづくりの楽しさ、豊かさをみなさまにお届けするため、2020年に立ち上げたプロジェクトです。今はニーダーと発酵器がラインアップしていますが、それに先がけて1986年からホームベーカリーの製品開発をしていました。長年にわたりパンづくりを追求するなかで愛用してきた小麦粉があります。それが柄木田製粉の「ユニバース」です。

「ホームベーカリーにはいろんなコースがあって、食パンや菓子パンのほか、砂糖や油脂を使わないフランスパンのコースもあります。すべてが同じ粉で焼けることが製品開発のうえで重要でした。ユニバースは使いやすく、風味が良くてコクがある。粉そのものがおいしいんです」。こう語るのは、長年パンづくりの製品開発に携わってきた設計グループの主任Sです。


柄木田製粉のパン用粉のパッケージデザインはどれも秀逸。真ん中が「ユニバース」

これを受けて柄木田製粉、営業部の塚田英幸さんは言います。「柄木田製粉の創業当初から、パン用粉といえばユニバースです。ユニバースは、とにかくパンの作りやすい粉ですね。この粉ひとつでいろんな種類のパンが焼けます。家でパンづくりを楽しむ方にも愛用いただいています」

さらに塚田さんは続けます。「小麦粉に含まれる灰分(かいぶん)が0.5以上のものが二等粉。ユニバースは灰分0.42の一等粉です。汎用性の高いパン用粉を開発しました」

「より白いパン、よりやわらかいパンのために開発した『スーパーベストワン』は、灰分0.38の上級粉です。吸水性がよく、力があるのでプロ仕様ですが、Sさんがおっしゃる風味でいえば、ユニバースのほうが味のある粉です。そしてユニバースは吸水性もある程度あって、季節を問わず安定性の高い小麦粉です」

ロール製粉の工場見学

小麦の受け入れから出荷まで、製粉の工程を見学させてもらいました。工場を案内してくださったのは工場長補佐を務める林寛樹さんです。
「柄木田製粉には、ロール製粉と石臼製粉の工場があって、ここはロール製粉の工場です。ユニバースもここで製粉されています。ロール製粉はおもに外麦(がいばく)を配合して挽き、石臼製粉はおもに内麦(ないばく)を品種ごとに挽きます」

 外麦と内麦とは、輸入小麦と国産小麦のこと。柄木田製粉で使う外麦はカナダとアメリカ、オーストラリアから輸入され、静岡や東京の港に水揚げされます。大型トラックのコンテナにバラ積み(包装せず、そのまま積み込むこと)された小麦は、平日は毎日、午前と午後に運ばれてきます。ちなみにユニバースは、カナダ産とアメリカ産の小麦を配合しています。


居並ぶロール製粉機。ロール表面に刻まれた歯の粗さが機械ごとに異なり、挽ける小麦の細かさが変わる

 受け入れた小麦はいったん貯蔵サイロへ送られてから、「精選」の工程へ。麦わらや異物などを取り除いたら、「調質」のためタンクでひと晩浸水します。そして、いよいよ「挽砕(ばんさい)」の工程へ。工場の1フロアにロール製粉機がたくさん並んでいます。高速で速度差をつけて回転する2本のロールの間で、供給される小麦が粗く砕かれ、次の工程「ふるい分け」へ送られます。


ロール機から送られてきた小麦はシフターに投入されて、粒の大きさごとにふるい分けられる

 小麦の粒は「シフター」と呼ばれるふるい機にかけられます。シフターは6台あり、それぞれ6室または8室に分かれ、1室ごとに何十枚もの網がセットされています。シフターは大きく横揺れして、挽かれた小麦の粒を大きさごとにふるい分けます。その動きと音は、こわいほどの迫力がありました。

 ふるい分けられた小麦の粗粒「セモリナ」は「仕上げ」の工程へ。「セモリナ」に混ざる「ふすま」という皮の破片を取り除くために「ピュリファイヤー」と呼ばれる機械を通します。上から軽いふすま片を吸い上げ、下からセモリナを大きさごとにふるい分け、きれいになったセモリナは再びロール機へ送られます。これで上質な粉になります。


ロール製粉の最終段階へ。小麦粉は200ミクロン未満という細かな粒子になる

 このように、ふるい分けられた粒ごとに、さらに粉砕、ふるい分けを何十回とくり返し、粉が通るロール機の表面はだんだん滑らかに、ふるいの網目はだんだん細かくなって、小麦粉は最後には200ミクロンという細かさの最終ふるいにかけられます。

パン用粉なら柄木田製粉

工場見学を終えて「ご覧いただいたとおり、挽いてふるって、商品ごとの品質にするためミックスしているだけ」と塚田さんは言いますが、ユニバースの味のちがいは明らかだと主任Sは返します。それを受けて塚田さんは言います。
「私どもは原料を売る会社ですので、お客さまが作りたいものに応じて小麦を配合し、挽いてさらにブレンドします。大手メーカーは単体で挽くところが多いようですが、配合して挽く小麦の粒子は、単体で挽いて合わせるよりも、さらに複雑になる。そこが味のちがいかもしれません」

パン用粉の話は、人気の高まる国産小麦にもおよびました。営業本部の田部井ひろ美さんは言います。「国産小麦の人気は、ここ数年ずっと上がっています。素材はできるだけ身近なものをと考える方が多いんですね。私どもは国産と長野県産の商品も多く作っています」
そして「弊社は麺用粉が主力ですが、パン用粉にも力を入れています」と教えてくれました。なかでもいちおしは2022年2月に柄木田製粉株式会社70周年記念商品として発売された「小麦のmirai」です。

これまで国産小麦といえば、中力系が主でしたが、ここ数年で改良が進んでパン作りに向いた強力系の品種も作られるようになりました。なかでも国産パン用粉のエースとされるのが「春よ恋」です。「小麦のmirai」は、この「春よ恋」に「きたほなみ」をブレンドしたパン用粉で、作業性が良く、風味と香りが強いのが特徴です。


BRENCレシピブックより、山型食パンとフランスパン

「『春よ恋』は、パンを作る人にマニアックな人気のある品種です。miraiは食パンだけでなく、フランスパンも非常に作りやすいですよ。あのフランスパン専用粉に負けないくらい、おいしく焼けます」という塚田さんの言葉に、主任Sも「通販でしか買えない、あの粉ですね。ぜひ、作ってみます」と声をはずませました。

さて、BRENCではニーダーと発酵器を購入した方に、柄木田製粉のユニバース2kgをおつけしています。通常、ユニバースは25kgしか販売していませんが、特別に小分けにしていただきました。ぜひこのおいしさを自家製パンで味わってみてください。

【新年STARTER SET】ニーダー、発酵器(柄木田製粉ユニバース2kg付き)

取材・文/塚田結子 写真・宮崎純一 


からきだせいふん

1939(昭和14)年、柄木田製粉所を設立、1952(同27)年、株式会社を設立。本社・長野と大阪を拠点に、小麦粉の製粉やそばの製麺を中心に事業を展開する。近年では国産および長野県産小麦を用いた商品に力が入る。

柄木田製粉株式会社
本社・工場|長野市篠ノ井会302
電話|026-292-0890
https://www.karakida.co.jp/